[論文No.0019] マリンオリゴペプチドの糖尿病患者脂肪細胞由来ホルモンの発現に対する影響

要旨
【目的】
 魚皮の酵素分解により製造したマリンオリゴペプチドが2型糖尿病患者のレプチン、レジスチン、アディポネクチンなどの脂肪内分泌ホルモンの発現に及ぼす影響を研究調査するために前向きコホート研究を行った。

【方法】
 適応条件に合う2型糖尿病患者100名と健常ボランティア50名を募り、無作為に、糖尿病介入群(A群)、糖尿病対照群(B)、健常者対照群(N)の3群に各50名ずつ群分けを行った。研究対象となる被験者全員の食事と運動について指導するとともに、通常投与されている薬物治療に加え、マリンオリゴペプチドを毎回6.5/g、2回/日、あるいは同量のプラセボを投与して、三ヶ月にわたる前向き二重盲検法による介入研究を行った。
 介入前後の1.5ヶ月後、3ヶ月後毎に採血を行い、空腹時血糖値、および、脂質、インスリン、遊離脂肪酸、レプチン、レジスチン、アディポネクチンなどの脂肪内分泌ホルモン濃度の変化値を測定し、データを分析して比較検討を行った。

【結果】
 介入前のA群とB群の空腹時血糖値、インシュリン、トリグリセリド(TG)、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、遊離脂肪酸、レプチン、レジスチンの各値が平均的に健常対象群、N群を上回った(P0.05)。
 マリンオリゴペプチドを投与後、糖尿病介入群Aの血糖値、インシュリン、トリグリセリド、総コレステロール、LDLコレステロールと遊離脂肪酸の値が1.5ヶ月後、3.0ヶ月後の各時点でそれぞれ低下傾向が現れ、介入前の値を有意に低下させた(P<0.05あるいはP<0.01)。また、糖尿病対象群B群の空腹時血糖値(FPG)、空腹インシュリン値(FINS)が介入1.5ヶ月後、および3.0ヶ月後の時点で上昇傾向が現れ、介入前に比べ有意な上昇を示した(P<0.05あるいはP<0.01)。が、B群とN群のTG、TC、LDL-C、とHDL-Cの値は1.5ヶ月後、3.0ヶ月後の時点で介入前の値に比較して有意差はなかった(P>0.05)。
 マリンオりゴペプチド又はプラセボを投与後の1.5ヶ月後の時点でA群のレジスチンの値が介入前の値を著しく上回った(P<0.01)。他の介入群に有意差はなかった(P>0.05)。A群の介入3.0ヶ月後のアディポネクチンの値が介入前の値を著しく上回った(P<0.01)。他の対象群では介入群と比べて有意差は見られなかった(P>0.05)。また、介入後のB群とN群のレプチンの値が介入前の値を著しく上昇させた(P<0.01)。A群介入前後の値に有意差はなかった(P>0.05)。

【結論】
 遊離脂肪酸、レプチン、レジスチンとアディポネクチンなどの脂肪内分泌ホルモンの異常発現は糖尿病とその心血管合併症の重要なメカニズムである。マリンオリゴペプチドは脂肪内分泌の発現をコントロールすることにより、血糖値や血脂、およびインシュリンの代謝を調節する可能性が示唆された。同時に、そのメカニズムについての研究は、海洋生理活性ペプチドによる糖尿病の予防治療およびその心血管合併症への臨床応用に手がかりとなるエビデンスを提供する。