要旨
【目的】
マリンオリゴペプチドがアデニンの誘引する慢性腎不全に与える影響を研究する。
【方法】
アデニン100mg/kgを注入して慢性腎不全の症病モデルを作り、マリンオリゴペプチドを1.125g/kgおよび2.25g/kgの2用量で投与して、慢性腎不全に与える影響を観察した。
実験開始時、第1週、第3週、第5週、第8週、第12週に各対象群ラットの血清中クレアチニン濃度と尿素窒素の平均値を測定し、ラットの24時間の尿量を収集して、クレアチニンクリアランスを計算した。実験の間にラットの精神状態や体重、ならびに成長変化を観察し、実験の最終段階で腎臓組織の超微細構造の観察を行った。実験は12週間に及んだ。
【結果】
実験第5週と第8週、ならびに第12週に、慢性腎不全症例モデルの血清中クレアチニン濃度は、次の通り、著しく上昇した。(182.2±119.52)μmol/L、(308.17±88.37)μmol/L、(347.57±68.24)μmol/L。尿素窒素の平均値も著しく上昇した(29.20±16.48)mmol/L、(63.03±18.68)mmol、(95.53±24.88)mmol。
しかしながら、クレアチニンクリアランスは顕著に低下した(0.53±0.23)ml/min、(0.17±0.13) ml/min、(0.14±0.08)ml/min。マリンオリゴぺプチドの2.25g/kg投与量群の血清中クレアチニン濃度、および尿素窒素は陰性対照群の発症ラットの血清値に比較して著しく低下したが、クレアチニンクリアランスは著しく上昇した。
第5週,第8週,第12週に測定した血清中クレアチニン濃度は、(105.60±11.84)ml/min、(175.40±73.93)ml/min、(240.14±71.53)ml/minで、尿素窒素の平均値は(23.62±3.89)mmol/L、(41.90±23.78)mmol/L、(72.93±26.12)mmol/Lであった。クレアチニンクリアランス値は(0.99±0.35)ml/min、(0.45±0.28)ml/min、(0.26±0.06)ml/minであった。
腎臓表面の超微細構造の比較では陰性対照群ラットより臓器は明るく表面細胞膜の損傷が抑制された。マリンオリゴペプチド1.125g/kg投与量群では陰性対照群ラットに比較して改善傾向も見られたが、血清中クレアチニン濃度、尿素窒素あるいはクレアチニンクリアランスの変化は陰性対照群ラットに比べて、有意な差は確認されなかった。
【結論】
マリンオリゴペプチドを2.25g/kg用量で投与した場合にアデニンにより引き起こされる慢性腎不全を遅延させることができた。