[論文No.1035] 小麦オリゴペプチドの高地トレーニングラットの骨格筋タンパク質とIGF-1に対する影響

要旨
【目的】
 小麦オリゴペプチドのタンパク質補充効果について、ラットに高地をシミュレーションして訓練を行い、骨格筋タンパク質に及ぼす影響とそメカニズムについて実験研究を行った。

【方法】
 60匹の雄性SDラットを正常対照群(Cグループ、n =10);低酸素対照群(HCグループ、n =10);運動トレーニング群(Eグループ、N =10);スポーツトレーニング+小麦ペプチド補給群(EWグループ、n =10);低酸素+運動トレーニング群(HEグループ、n =10);低酸素+運動トレーニング+小麦ペプチドグループ(HEWグループ、n =10)の6群に無作為に分けた。高地の低酸素状態は、標高3000メートルの状況をシミュレーションして酸素濃度を14.2%にした。運動トレーニングは90分の無負荷水泳を毎週6日間行った。EWとHEWグループは、毎回の訓練後、小麦オリゴペプチド溶液を500mg/kg•bw強制投与を行った。9週間後、ラット血清中のIGF-1の濃度と骨格筋Pro、ミオとIGF-1の量を測定し、群間比較により分析を行った。

【結果】
■Cグループと比較し、HCグループのラットの骨格筋中のProとMyoの含有量は有意に減少した(P <0.01)。同時に、HCグループのラット血清中および骨格筋中のIGF-1の含有量も有意に減少した(P <0.05)。
■Cグループに比較して、Eグループのラット骨格筋中Proの含有量に有意差はなかった(P> 0.05)。が、Myoの含有量と血清および骨格筋中IGF-1の含有量は、共に有意に減少した(P <0.05)。
■双方向ANOVAによって、長期的な高地トレーニングは、ラット骨格筋のProとMyo(P =0.05)の含有量をかなり減らすことができた。が、ラット血清中または骨格筋中のIGF-1の含有量を有意に減らすことはできなかった(P> 0.05)。
■双方向因果モデルANOVAによる分散分析では、小麦オリゴペプチドの栄養素補充がラット骨格筋のProとMyoの含有量を著しく向上させ(P <0.01)、且つ、運動トレーニングにおいて骨格筋および血清中のIGF-1の含有量も(P <0.05、P <0.01)大幅に向上させた。
■双方向因果モデルANOVAによる分散分析により、低酸素条件と小麦オリゴペプチドの栄養素補充が、無負荷運動に於いて、ラットの骨格筋のPro、IGF-1、および血清中のIGF-1の含有量に有意な相互関係が認められたP <0.05)。が、無負荷運動に於いて骨格筋Myoの含有量に有意な交互作用(P> 0.05)は無かった。

【結論】
■長期的な低酸素環境に於ける無負荷トレーニングは、ラットのIGF-1の分泌を抑制した。これにより、骨格筋に於けるタンパク質合成が阻害されたと考察された。
■小麦オリゴペプチドの投与は、高地の低酸素状態下での無負荷運動に、IGF-1の分泌を有意に促進させた。このことは、高地での低酸素状態、ならびに無負荷運動により発生する骨格筋タンパク質の減少に対し、非常に重要な役割を果たし、骨格筋タンパク質の減少抑制効果が確認された。