[論文No.1014] マリンオリゴペプチドのラット手術後の傷口癒合への実験研究

摘要
【目的】
 マリンオリゴペプチド(MCP)が手術後ラットの傷口癒合に及ぼす影響を観察し術後栄養補給の重要性について研究を行った。

【方法】
 体重230-250gのSDラット120匹を選択し、各群、24匹ずつを5群に分け、陰性対照群とマリンオリゴペプチド(0.667g/kg.bw、2.0g/kg.bw、6.0g/kg.bw、12g/kg.bw)の各4投与量群に無作為に分類し、陰性対照群ラットには同量の水を投与した。背部の皮膚から腹腔までを切る手術を行い、手術後第3、7、14日目にラットを8匹ずつ致死させ、術後の傷口の癒合状況について観察すると共に、HE染色、Masson染色、傷口皮膚の抗張力強度テスト、オキシプロリンの検出、測定を行った。

【結果】
■手術後のラットの傷口癒合の肉眼観察結果
 手術後3日目、陰性対照群ラットの傷口は、顕著に腫れた。が、マリンオリゴペプチド投与群ラットの傷口は顕著に軽減した。手術後7日目、マリンオリゴペプチド投与群のラットの傷口の癒合状態が陰性対照群に比較して、明らか良いと見えた。マリンオリゴペプチド投与群のラットの傷口は、陰性対照群ラットより1~2日、早めに癒合した。同時に6.0g/kg.bwと12g/kg.bwの高投与量群ラットの癒合が最も良かった。
■HE染色による、術後の組織切片での観察
 術後7日目、陰性対照群ラットの傷口の瘢痕組織が大きく、炎症細胞はマリンオリゴペプチド投与群より顕著に浸潤していた。術後14日目、陰性対照群ラットの傷口の瘢痕組織と炎症細胞が明らかに大きく、マリンオリゴペプチド投与群の傷口表皮の瘢痕組織は陰性対照群より明らかに小さく、炎症細胞も顕著に減少した。
■Masson染色による観察結果
 Masson染色により、結合組織とコラーゲン組織を緑に、平滑筋を赤に、細胞核を褐色に、それぞれ染色を行った。術後3日目、各群ラットの傷口のコラーゲン繊維数量に、顕著な差はなかった。術後7日目、マリンオリゴペプチド投与群のコラーゲン繊維数量は陰性対照群より明らかに多かった。6.0g/kg.bwと12 g/kg.bwの高投与量群が最も良い状態で在った。術後14日目、マリンオリゴペプチドのコラーゲン繊維数量が陰性対照群より明らかに多かった。術後、第3、7、14日目にラットの傷口癒合のコラーゲン繊維の状況は、マリンオリゴペプチドがラットの栄養状態を改善し、傷口癒合を促進したことが確認された。

【結論】
 本実験では、マリンオリゴペプチドを投与して、栄養面から術後の傷口癒合への影響について研究を行った。マリンオリゴペプチドそのものが抗酸化能を有し、体内のフリーラジカルを取り除き、炎症性反応を減少させ、免疫力を増強し、抗感染能を高め、ラットの術後の傷口癒合を促進させたと考察された。組織病理学結果からも、マリンオリゴペプチドが傷口癒合のメカニズムの一つである抗菌作用および繊維芽細胞の増加を促進させたことが確認された。