要旨
【目的】
マリンオリゴペプチド(MCPs)が高インスリン血症モデルラットの血糖値および脂質代謝に及ぼす影響を研究する。
【方法】
雄性SDラットを4カ月間、高脂飼料で飼育して高インスリン血症モデルラットを作成した。
作成したモデルラットを体重および空腹時インスリンレベルにより、高インスリン対象群(HIC)とマリンオリゴペプチド介入群(0. 225, 0. 45 , 1. 35g / kgbw)に群分けを行い、通常の飼料を与えた。4ヶ月の健康な雄性SDラットを陰性対照群とした。陰性対照群のラットにはMCPに代わり、同量の蒸留水を投与した。
実験期間中、HICおよびMCP各群には引き続き高脂肪食を与え、陰性対照群には通常飼料を給餌した。
全実験期間は8週間。実験では、経口ブドウ糖負荷試験の最後に、空腹時血糖値、インスリン値、脂質レベル、抗酸化酵素の活性ならびに血清中のマロンジアルデヒドを検出するとともに、膵臓β細胞の微細構造の変化も観察した。
【結果】
実験の最後に、HIC群と比較して、MCPS各投与量群ラットの空腹時インスリン値、総コレステロール値およびトリグリセリドの量は有意に減少した。0.225と1.35g/ kgbw MCPS各群ラットの空腹時血糖値は有意に低下した。0.45と1. 35g / kg MCP投与群のラットはブドウ糖負荷試験(OGTT)直後、2時間後、5時後で、血糖値および血糖値曲線の下面積を有意に低下した。同時に、MCP各投与量群ラットの血清SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)活性は有意に上昇した。1.35g/kg、MCPs群ラットでは血清グルタチオンペルオキシダーゼ活性が大幅に改善された。血清マロンジアルデヒドが有意に減少し、膵臓β細胞の超微細構造では大幅な改善が見られた。
【結論】
本研究では、高脂肪食により誘導した高インスリン血症モデルラットにMCPを投与すると、空腹時インスリン濃度は有意に低下した。また、ラットの空腹時血糖値も改善できた。同時に1.35g/kg体重MCP群ラットの膵島β細胞の損傷も大幅に改善された。脂質代謝障害にはフリーラジカルの増加が伴い、酸化ストレスが強くなり、外周筋肉と脂肪組織がインスリンの作用を阻害するため、インスリン抵抗性を引き起こす。β細胞は酸化ストレスによる傷害を受けやすく、インスリン分泌の異常を引き起こし、結果として、耐糖能異常による損傷を発生させる。本研究では、MCPsを与えた後、血清TC、TGが低下することが認められ、SODおよびGSH-Px活性は多様に増加した。MCPsラットの抗酸化能力を高めることにより、脂質代謝障害を改善することができ、酸化ストレスを減少させ、インスリンの生物学的効果を促進し、インスリン抵抗性を軽減することができた。このように、MCP投与は、抗酸化作用により、高脂肪食で飼養したラットの生体内脂質代謝障害を改善し、膵島β細胞傷害を減らし、それによりインスリンの生物学的活性を高めてグルコース代謝を向上させると考察された。