講演内容説明(3) コーンオリゴペプチドのアスリート領域における応用

「第二回 食品由来ペプチドの機能及び応用学術交流会」
講演内容説明(3)

■コーンオリゴペプチドのアスリート領域における応用

吉田 智 研究員
SARAYA株式会社 マーケティング3部
東京大学大学院医学系研究科 客員研究員

 

new_toba3_01食品由来ペプチドが栄養学の分野に使われたのは直近十年のことであり、アスリート領域での応用は更に新しい課題となる。運動科学の発展に伴い、スポーツ+栄養という概念が広く受け入れるようになったが、栄養の角度から、いかに疲労を緩和し、筋肉損傷を軽減させ、また、タイムリーに適切な栄養を補充するかは難しい課題である。そのキーワードはタンパク質栄養のアミノ酸構成及び吸収スピードにある。なぜならばコントロールの最も重要な要素だからである。

筋肉損傷という観点からは、運動前の筋肉組織内のペプチド及びアミノ酸の貯蔵量、そして運動消耗後のタイムリーな補充が重要な意味を持つ。
骨格筋量の増加という観点からだと、運動後30分及び深睡眠時の成長ホルモン分泌のピーク期間をいかに把握するかが重要視される。

new_toba3_02本実験がコーンオリゴペプチドに着目するのは二つの特徴からである。
第一の特徴は、直接且つスピーディに吸収され得る平均分子量が小さい(300~500Da)ジペプチド及びトリペプチドを50%以上含有するので、タイムリーに栄養補充が可能になることである。
第二に、筋肉が特異的に必要とする分岐鎖アミノ酸であるBCAA(特にロイシン)がコーンオリゴペプチドには、他の原料に比べ豊富に含まれることである。よって、コーンオリゴペプチドは運動時の筋肉栄養及び筋肉損傷修復に最も適していると考えられる。

本実験は国立大阪大学柔道部の選手を対象とした。国立大学の柔道は高専柔道と呼ばれる寝技を主体とした伝統的なルール下で行われているので、国際ルールに比較し試合時間は長く、硬直状態も長い。そのため筋持久力に対する要求が比較的に高いことを考慮した。
残念なことに、本実験は選手らに身体的負荷を与えないことが前提となっているため採血を伴う血液検査を行うことはできなかった。また筋力、筋肉疲労度などのバラメーターの設定方法については体調不良、負傷等を考慮する必要があった。そのため統計学的なデータを得ることが難しかった。同じ理由で、コントロール群を設けることさえできなかったため、厳密的な実験と言い難いのである。それにしても、本実験ではコーンオリゴペプチドが顕著な効果がある結果を示唆した。

 

 

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●実験結果:
約三ヶ月一定量(3gx3回/毎日)コーンオリゴペプチドの摂取によって、少なくとも下記の傾向性結果を得ることができた。
1.体重増加を変化させず除脂肪体重(筋肉量)増加あり。
2.有意差はないが筋肉痛の軽減傾向がみられた。
その他、実験対象の大阪大学柔道部は43年ぶりに第63回 全国七大学柔道優勝大会で優勝となった。

 

●考査:
1.ペプチドの運動栄養学における学術論文は多くありますが、コーンオリゴペプチドはまだ少ない。理論上、コーンオリゴペプチドの効果がより期待できるものである。
 本実験の回収しうるデータに不完全な部分はあるが、良い結果を考慮し、より厳密な実験を行い、確実なデータを得る必要があると思われる。
3.コーンオリゴペプチドの摂取量について、栄養学的及びペプチドの生物活性の二方向から考慮し、適切量を検討すべきである。
4.筋肉に対するコーンオリゴペプチドの特異的効果があるとすれば、他の領域、例えば加齢による筋肉減少症候群(サルコペニア)などでの応用も興味深いと考えられる。