[論文No.0028] マリンオリゴペプチドの高血圧患者脂肪由来ホルモン発現に及ぼす影響

要旨

【目的】

 前向きコホート研究に従い、鮭皮を主原料に酵素分解法により抽出精製されたマリンオリゴペプチドが高血圧患者の血圧ならびに脂肪内分泌ホルモンの表現型に与える影響を探索する。


【方法】

地域住民より被験者を募り、その中から条件と一致する高血圧患者100名と健常者ボランティア50名を選出した。各対象群が50名ずつとなるよう、高血圧患者100名を無作為に高血圧投与群(C群)と高血圧対照群(D群)に、また健常者ボランティア50名を正常対照群(N群)に郡分けを行った。被験者の食事と運動を指導し、従来の薬物治療に併用して、マリンオリゴペプチド(6.5 g/回, 2回/日)と偽薬をそれぞれ投与し、3ヶ月間の前向き二重盲検コントロール研究を行った。投与前、投与開始より1.5ヶ月後、および3.0ヶ月後の時点で空腹時血糖を測定し、同時に採血を行い、遊離脂肪酸、レプチン、レジスチン、アディポネクチン等の脂肪内分泌ホルモンの濃度変化を解析、比較した。


【結果】

 マリンオリゴペプチドの投与前、高血圧投与群と高血圧対照群(C、D群)の収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、脈圧(PPD)、平均動脈圧(MAP)の平均値はすべて正常対照群(N群)より有意に高かった(P>0.05或はP<0.05或はP<0.01)。投与後、C群とD群のSBPは低下傾向を示し、有意差が確認された(P<0.01)。C群の投与後のDBPは投与前より顕著に低下傾向を示し、有意差が確認された(P<0.01)。D群の投与後DBPは投与前より穏やかな上昇傾向を示し、有意差が確認された(P<0.05)。C、D群のPPD平均値とC群のMAP平均値は投与前より顕著に低下した(P<0.01)。その他の投与前後の比較では有意差は確認されなかった。マリンオリゴペプチドの投与前、C、D群の遊離脂肪酸(FFA)、レプチン、レジスチンの濃度はN群より顕著に高かった(P<0.01)。しかしながら、アディポネクチンの濃度はN群と比較して有意差が認められなかった。

マリンオリゴペプチドあるいは偽薬を投与後、C群のFFA濃度は投与前より有意に低下した(P<0.01)。C群での投与開始より3.0ヶ月後のアディポネクチン濃度は投与前および投与1.5ヶ月後より、顕著に上昇した(P<0.05)。が、各対象群での投与前後のレジスチン、レプチン濃度に有意差は認められなかった。

【結論】

 遊離脂肪酸、レプチン、レジスチン、アディポネクチン等の脂肪内分泌ホルモンの異常表現型は高血圧と心臓血管疾患合併症の重要なメカニズムの一環である。マリンオリゴペプチドは脂肪内分泌ホルモンの表現を抑え、感受性を高めることにより血圧降下に導く。その作用機序のさらなる追求が、マリンオリゴペプチドの高血圧ならびに心臓血管合併症における臨床応用に理論的なエビデンスを提示する。