研究者の思いを覗いてみる

 

column_img20160701_01みなさん、こんにちは。

湿度の高い毎日、いかがお過ごしでしょうか。

 

例年、梅雨でも晴れ間は多いように感じていたのですが、「今年の梅雨前線は頑張っているわ」など、かえって親近感を覚える今日この頃。

身体が重だるくなりやすい毎日です。

せめて、大地の恵みとなりますように。

 

前回は『第4回国際食品由来ペプチド学術研究学会(IACFP)』から、WATAMI株式会社の麻植有希子さんの研究内容を簡単に報告させていただきました。

麻植さんとお会いした印象は、「お話好きで、よく笑い、場を明るくしてくれる雰囲気の女性」でした。お話させていただき、いろいろなことへの関心が高く、頭の回転は速く、そして高齢者の健康に想いを持っている人だと感じました。

 

そこで。

健康産業新聞社に掲載されましたインタビューをもとに、研究者としての想いを覗いてみます。

 

麻植さんは、ペプチド研究を始めたきっかけを次のように語っておられます。

アミノ酸がいいとか、ペプチドがいいとかいう入り方ではなく、目の前にいる高齢者にどうやって食べてもらえるか、というのが第一。食べないことには栄養もつかないわけですから、目の前にいる嚥下困難者の方にいかに食べてもらうか、そういうところがきっかけだった。

食べていくと栄養状態は改善するが、どんなに食べても改善しないグループがある。そこで食べ方をどう変えれば、栄養吸収が改善されるか、と考えた時にペプチドに行きついた。

 

ペプチドの開発について

ポイントになるのは、食べてもらうには、おいしくないといけないという点。

ペプチドの機能性というところはかなり実証されているが、ヒトが食べ続けられるかどうかになった場合、様々なことを考える必要がある。

例えば、味噌汁に混合オリゴペプチドを3g添加する実験を行ったが、これが4gになると、味が損なわれて食べてもらえない。おいしさを保つためには3gという量がカギになるが、研究者から「3gでは足りない」と指摘されることもある。

しかし4gでは食べてもらえない。

 

今後のペプチド研究について

腰痛が良くなったとか、髪の毛が少し黒くなったなど、QOL(※)が改善されたという声も出てきている。そのあたりのQOL改善をうたっていけるような研究にも力を入れていきたいと考えている。

※QOL(クオリティー・オブ・ライフ):ひとりひとりの人生の質。または生活の質。

 

みなさんは、このインタビューから何を感じられましたか?

 

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麻植さんは、何をしている人ぞ?

臨床栄養士と介護支援専門員の資格を持ち、現在、健康長寿科学栄養研究所の所長として活躍されています。前回のコラムでは、論文「混合オリゴペプチド製剤の超高齢者栄養介入における応用」から、ペプチド摂取により高齢期の体重減少が抑えられる可能性についてご紹介いたしましたが、ペプチドへの関心が、「食べる」という基本的な活動の支援を見直すことから、ペプチドの研究を始められたことに、わたしは強い感銘を受けました。

 

心理学者アブラハム・マズローの欲求5段階説では、食べることは第一階層の「生理的欲求」に属します。この欲求は、生きていくための基本的で本能的な「食べたい、飲みたい、寝たい」などの欲求で、この欲求がある程度充たされることは、ヒトとして生きる上で重要な意味を持ちます。

栄養の視点のみではなく、味にこだわることは、その人を尊重する行為だと思いませんか?

そう、ペプチド研究は人生を豊かにすることに目的があります。

 

『人民の人民による人民のための栄養』

 あれ、どこかで聞いたような、聞かなかったような???

 

ヒトを想う気持ち。

研究者として想いが豊かだと感じたのは、ここに由来するのかもしれません。

 健康のありがたさは、損ねた時に初めて実感するのでは困ります。

みなさんの今日の健康は、昨日の栄養に支えられ。

明日の健康は・・・。

 

それでは、みなさんの今日一日が

みなさんと傍におられる方の健康を実感できる一日となりますように。

 

研究員 前原なおみ