[論文No.1036] 小麦オリゴペプチドの高地トレーニングラットの骨格筋タンパク質とIGF-1に対する影響およびその機序

 

要旨
【目的】
 高地の低酸素をなぞらえてトレーニングを行うラットの骨格筋タンパク質の代謝に対し、小麦オリゴペプチドの補充効果やその作用機序について実験研究を行った。

【方法】
 SDラット雄性60匹を、正常対照群(C群、n=10)、低酸素対照群(HC群、n=10)、運動トレーニング群(E群、n=10)、トレーニング+小麦ペプチド投与群(EW群、n=10)、低酸素+運動トレーニング群(HE群、n=10)、低酸素+運動トレーニング+小麦ペプチド投与群(HEW群、n=10)の6対象群に無作為に群分けを行った。
 標高3000メートルを模擬した低酸素状態の濃度は14.2%とした。スポーツ訓練では水泳90分を週6日間行った。EWおよびHEW群ラットに訓練後毎に小麦ペプチド溶液500mg/kg•bw用量を経口投与した。9週後、各対象群のラットの血清テストステロン(T)、コルチコステロン含有量(COR)と骨格筋蛋白質(Pro)、ミオシン(Myo)とアンドロゲン受容体含有量(AR)の検出を行った。

【結果】
■C群に比べ、E群ラットの骨格筋中のPro含有量は低下したが、有意差はなかった(P >0.05)。MyoとAR含有量は有意に低下した(P <0.05)。E群ラットの血清T含有量は低減し、血清Cor含有量は上昇した。が、有意差はなかった(P >0.05)。
■C群に比べ、HC群ラットの骨格筋中のProとMyoの含有量は有意に低下し(P <0.01)、骨格筋中ARと血清Tの含有量も有意に低下した(P <0.05)。また、血清Corは有意に上昇した(P <0.05)。
■二元配置分散分析法によると、長期的に高地を模擬したトレーニングはラット骨格筋中のProとMyoと血清Tレベルを有意に上昇させた(P≤0.05)。が、スポーツ訓練では血清Corの含有量低下に有意差は認められなかった(P> 0.05)。
■二要因分散分析により、低酸素状態+小麦ペプチド投与群は負荷によりラット骨格筋中のProとARの含有量が改善され、血清Cor含有量を低下させた。低酸素負荷状態では、血清中の相互作用により、負荷は有意に作用した(P <0.05)。しかしながら、更に負荷を強化した場合にはラット骨格筋中のMyoと血清Tレベルの向上には至らなかった(P>0.05)。


【結論】
■長期の低酸素状態による高地の模擬トレーニングではTの分泌を抑制し、Corの分泌を促進した。負荷による影響は骨格筋中のタンパク質合成を阻害した。
■小麦ペプチドの補充は低酸素状態による負荷やスポーツトレーニングにより誘発される分泌障害を効果的に改善した。低酸素状態による負荷やスポーツ訓練により誘発される骨格筋のタンパク質含有量の損失低減を遅滞させたことは非常に重要な役割を果たすと考察された。